アンリ・ルソーの絵はこれまでも写真やネットでは見たことはあったがなかなか実物を見る機会が無かった。いくつか所蔵しているという美術館に行ってはみるものの、常設展示されていないので一度も実物を見ることができなかったのだ。それが今回、ようやく念願かなって見ることができた。
展示会の場所は世田谷美術館
場所は東京の世田谷美術館。東急用賀駅から徒歩で10分ほどの砧(きぬた)公園内にある。緑に囲まれた公園の中にある世田谷美術館はこじんまりした地域の美術館と言う感じ。
今回の展示は世田谷美術館のコレクション展として開催された「緑の惑星 セタビの森の植物たち」というタイトルで世田谷美術館所有の作品で森をテーマにしたもの。(セタビとは「世田谷美術館」の略、と後で気づいた!)

残念ながら館内は撮影禁止なので入口にあった看板を撮影。やっぱりこの展示メインはルソーのようで、タイトルバックもルソーの作品「散歩(ビュット・ショーモン)」がメインバック。

「天然」ルソーの魅力
アンリ・ルソーの魅力は何といってもその画風。描かれた当時、展示会ではどの作品も「誰も笑わずにはいられない」と言われるほど滑稽な画風としてしか扱われなかった。が、その後、ピカソなどがシュールな画風で地位を築くと誰にも真似できないルソーの画風は一躍脚光を浴びることになる。ピカソ自身、ルソーの絵を入手して手放さなかったよう。ルソー本人は狙って描いているわけではなく、「これしか描けない」からこうなっていったわけで、むしろピカソにはまねできない画風だったというわけ。これが天才であり天然と言われる所以でもあります。
一方でルソーは自身を「古典的な絵を描く写実主義」と思っていたらしい。普通、そうであればなんとか上達して写実主義を学び、「それ相応に努力する」のでしょうけど、こういう天然な人は鋼の精神力なのか、底知れぬ鈍感力の持ち主なのか、あるいは己を貫き通せる力があるのか、上達しないままそのままの画風を押し通したわけですね。結局、それが幸いして時代が彼に追いついた、と言うのでしょうか。世間もルソーの良さを認めるようになる。そんな彼の魅力が現代でも人を惹きつける絵として残っているのだと思う。
現代ポップアートにつながる作風
ルソーの絵の特徴として挙げられる色彩感覚の豊かさがある。今回公開されている「散歩」は森の色調が緑メインになっているのであまり感じられないがそれでも現代ポップアートにつながる色彩感覚は森の色調だけでも伝わってくる。またもう一つの魅力である葉っぱの表現方法。とにかく一枚一枚丁寧に描いていくという手法は今回の「散歩」でもその一面は存分に味わえる。
本当は人物画ににじみ出てくる素朴で子供が描いたような天然な風味を見たかったが、今回の作品では人物が小さく、残念ながらそこはあまり感じられなかった。世田谷美術館には今回の「散歩」以外にも「サン=ニコラ河岸から見たシテ島(夕暮れ)」「フリュマンス・ビッシュの肖像」「戦争あるいは戦争の惨禍(リトグラフ)」の4点があるという。しかし全然展示してくれないんですよね。もったいぶらずに一挙公開してくださいよ、世田谷美術館さん。

これを見ればあなたもルソーが好きになれる
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