特殊詐欺(オレオレ詐欺)は相変わらず減る傾向もなく、むしろ海外に詐欺拠点が移され、巧妙化し、摘発が難しくなっていると聞く。いつの時代でも詐欺は存在するのだが、詐欺の中でも典型的なスタイルに「ポンジスキーム」というものがある。
ポンジスキームの仕組みはいたって単純。詐欺師がカモに対して「儲かる」「限られた人だけの情報」など、甘い言葉で誘う。ある程度のお金を預かり、その見返りとして比較的高い割合の利子をつけるのだ。
最初に預かる金額はそれほど高くはない。約束していた利子も必ず出す。そのうち「もっと儲かる」という誘い、あるいはカモが「もっと儲けたい」という思いから、さらに預ける金額が高額になる。しかしうまい話は長くは続かない。ある程度まとまった金額が詐欺師に入った段階で連絡がつかなくなる。気づいたときはもう遅い。
このポンジスキーム、話を聞いているだけだと「どうして騙されるのだろう」と不思議な感じもするのだが、いつの時代もほぼ同じ手口で姿かたちを変えて登場する。商材は未公開株だったり不動産だったりサービス事業だったり海外投資だったりいろいろ。この商材が変わることでいつの時代でも通用してしまうのだ。
この手の詐欺がすぐに摘発されないのは「詐欺である」という証拠、気づきが遅れるからだ。貸した側はしばらくの間、約束通りの金額を受け取っているので疑う余地がない。気づきが遅れれば遅れるほど、詐欺師が逃亡する時間的猶予ができる。また仮に発覚しても詐欺師本人から「きちんとしたビジネスをやろうとしていたが、失敗した」と言われると詐欺と証明するのが難しくなるのだ。

今回は高級腕時計が商材なのか
最近、ニュースになっているのが「トケマッチ」という会社が引き起こしている騒動だ。商材となっているのは高級腕時計。まだ詐欺とは決まっていないが、すでに当事者が海外に逃亡している、現物が転売されている、など、限りなく詐欺の香りが漂っている。
ビジネスの形としては「手持ちの高級腕時計を貸したい人」から時計を借りて「高級腕時計を使ってみたい」という人に貸し出し、その仲介料をビジネスにする、という仕組み。
このビジネス、貸し出す側と借りる側の心理状況が成立しないと仲介者も成立しない。個人的に理解できないのは「時計を借りたい人」というのはどういう人なのだろう、というところだ。自分のものになるわけでもない時計に金を払って借りて使う、というのはどういうシチュエーションなのだろうか。高級時計というものを一度は使ってみたい人なのか? 友人知人、あるいは飲み屋のおねーちゃんに自慢するのか? いやはやその状況、心理が全く理解できない。
また時計を貸し出す側の心理も理解できない。きっとそれなりに大切にしている時計であろう。なぜ、それを貸し出すのだろうか。まあ、お金持ちであればそのぐらいのことは何も感じないのかもしれないが、金持ちだったらいくばくかの金(どの程度の金額を受け取れるのかは知らないが)のために自分の大切な時計を貸し出すのか? これも理解できない。
先に述べたように詐欺と決まったわけではない。実際、仲介人が空いている家を貸し借りすることはあるのだから。また最近では洋服などもこうした仕組みを利用して貸し借りする人がいるようだ。当人は何も話していないが限りなく詐欺に近い。

それでもポンジスキームは繰り返される
おそらく、今後も形を変えてポンジスキームは繰り返されるだろう。騙されない唯一の心構えは「うまい話はどこにもない」ということを今一度肝に銘じることだ。ところが「少しでも金になるなら」あるいは「儲けたい」という思いが判断を鈍らせる。いつの時代も詐欺は人の強欲に付け込んでくるのだから。
